自問自答

 娘の高校入試のために車で朝送っているときに、フロントガラスの正面の空高く、鳥がVの字を形作って集団で飛んでいるのを見た。大切な日にまるで祝福されているかのような光景に、根拠もなく娘の合格を確信した。案の定娘はその高校に合格したが、以来僕にとっては、集団でV字飛行をする鳥たちは幸運の印のようになった。  その光景を昨日の朝、いつものテニスコートのウォーキング中に見た。一体どんなに幸せなことが起こるのだろうと勝手な想像を働かせていたが、結局は何も起こらなかった。と言うより寧ろショックで落ち込むような報告が夜メールで入っていた。  ある方が亡くなったという連絡だったのだが、漢方薬を頼まれてまだ数日しかたっていなかった。随分前にその症状で質問されたような記憶もあるが、頼まれたわけではなかった。ところがかなり症状が悪化されたみたいで、今回はハッキリと依頼された。薬が役に立つ前に亡くなくなってしまわれたが、果たしてどの時点で依頼されていれば少しは役に立てたのだろうと、昨夜は自問を繰り返すばかりだった。その病気をかなり専門的にやっていた息子に数日前に聞くと、かなり悲観的な指摘をした。専門家には分かるのだろうが、こちらにはそれを判断することは出来ない。よかれと思い手伝っても、奇蹟としかいいようもない確率でしか期待できないものに挑戦していたのかもしれない。  どんな病気でも、診察をする医者と情報を交換しながらお世話できたら、治癒の確率も上がるし、無益な負担を強いることをしないですむことを昨日は知った。  漢方に興味を持って通ってきてくれる薬剤師さんの親族の方の不幸にお役に立てずに、彼女の漢方に対する信頼を下げてしまったかなと、これも又、自問自答の大きなテーマだった。