説明

 不在の息子に代わって説明を受けたのだが、熱心な1時間にも渡る説明の後僕がそのセールスに言った言葉は「ありがとう、でも9割は忘れた」だった。「欲しい人があったら紹介してください」と言われても、ほとんどパソコン教室かと思われるような指導を受けなければ運転出来ないようなら、少なくとも僕の世代以上には勧められない。 安全のための装置が満載だからその車を選んだのだが、その装置を上手く使いこなせなれなければ、元々付いていないのと同じだから意味を持たない。手を離しても、アクセルを踏まなくても走っていけるし、後ろも前もぶつかりそうになると警告してくれるし・・・あれ、やっぱり忘れた。こんな説明なら5分ですんだはずだから、もっともっと僕にとって未知の内容はあったはずだ。うがった目で見れば、車代のかなりの部分がこの付録みたいな装置のために上積みされているのではないかと思った。そう言えば、ポケットに鍵を入れたまま車に近づくと勝手に鍵が解除され、離れると施錠されると言っていた。実演もしてくれたが、結局驚いただけでやり方は忘れた。ただ印象に残ったのは、「この鍵を無くさないでください、これだけでも8万円しますから」という言葉だ。何で鍵だけでそんなに高いのか分からないが、僕にとっては恐怖の付加価値だ。  帰ってきた息子に操作方法を教えようとしたら、これ又1,2分ですんでしまった。息子は僕の受け売りを聞いていたのか聞いていなかったのか分からないが、キーを持って出ていくとそのまま車に乗って出て行ってしまった。「なんじゃこりゃあ」あの1時間はなんだったのだ。