廃車

 息子は「怖いなあ」と言うし、車屋さんは「あれで高松まで行くんですか?」と言うからさすがの僕も諦めた。明日を最後に17年乗った車を廃車にする。丁度明日が車検切れの最後の日で、正に乗り納めだ。二人が心配してくれたように、信号で止まるとエンジンまでが止まりそうになる恐怖と戦いながら高松に漢方薬の勉強をしに行ってくる。 息子が自分の車の車検が切れたので僕の車を代車として使った。帰ってから開口一番「お父さん、よくあんな車乗っているなあ、信号で止まるとエンジンが止まりそうで恐ろしかった」と言った。その後に「もう新しいのを買ったら」と言ってくれたので、やっと決心した。今まではもったいないという気持ちで危険を押しのけていた。僕は運転しているから聞こえないが、妻が駐車場から出すときなど大きな音がする。ひょっとしたらハンドルを切るたびに大きな音がしていたのかもしれないが、乗っている人間よりは道行く人達の方が怖かったかもしれない。  月曜日からは息子のお古の車に乗ることになる。8人乗りだからかの国の子達を色々なところに連れていってあげるには都合がいいが、運転に自信がない。どんなことがあっても彼女たちを傷つけてはいけないから運転の練習をしてみようと思う。ただこれで僕の欠点がひとつ機械によって補われる。「オトウサン ダイジョウブ?」「オトウサン ヨク マチガエル」こんな会話がナビのおかげで車内から消えるかもしれない。ただ僕自身にはまだナビが付いていないから、これからの人生も今まで通り「オトウサン ヨク マチガエル」のままだ。