風貌

 選挙じゃあるまいし。しょうがないからくだらないものから捨てていって最後に残った政党と同じように、しょうがないから最後の選択肢に残ったくだらない番組を見ていたら?テレビをつけていたら?、息子が耐えられなくなって「チャンネル変えても良い?」と珍しいことを言った。ほとんど使命感でやっているとしか思えないNHKの歌番組だったのだが、演歌のオンパレードでさすがに耐えることが出来なかったのだろう。  どれでも良かったのだろうがあるチャンネルに止まったときに、アメリカのセレブの日本人妻の映像が流れていた。子供のパーティーを利用して大人同士が親交を深めるというものらしいのだが、親同士の会話や表情を見ていた息子が「楽しそうではない」と言った。とってつけたような会話がとってつけたような表情から繰り出されているのを僕も感じた。そしてパーティーの準備でかり出されているイベント屋や料理屋などのほとんどが、人種が明らかに違うことに気がついた。ほとんどの業者が移民を思わせる風貌だった。何千円の稼ぎのために大金持ちの虚栄を縁の下で支えている。御多聞に漏れず低俗なナレーションが流れていたが、息子は「寧ろあのおじさん達(移民)と話してみたい」と言った。 中学を出て寮に入り、以来離れて住んだから、ほとんど会話をしていない。どの様な価値観の大人になっているのか知る術もなく、ただひたすら信頼するしかなかったが、このところ珍しく長い時間会話する機会が増えて、やっとその後の人となりを理解できるようになった。まるで他人事のようだが、息子などと言うものは所詮その様なものだし、それでいいと思っている。取り返しのつかないような人格になって貰っては困るが、親の期待するような型にはめることは出来ない。  ごくごく普通の人達を慈しみ、偉すぎる人や悪過ぎる人を好まない。僕と同じようなスタンスを垣間見せる姿に意図した放任の成果を見た。