京都

 おいおい大丈夫か。有り難いけれど心配になる。 かの国の若い女性達に何か日本での想い出を作ってあげようと提案すると、口を揃えて京都に行ってみたいという。中には富士山、東京などと言う子もいるが圧倒的に京都が多い。京都は僕にとっては勉強会で訪れる場所でしかないから、何十回も訪ねてはいるが、いわゆる観光などと言うものはしたことがない。だからあの子達を案内しようにも、困っている。例えば多くの子が口を揃えて言う金閣寺も、中学校の修学旅行で行ったきりだ。 今日関東地方のある女性からいつものように漢方薬の注文の電話を貰った。いつも楽しく長い時間話をするのだが、いみじくも彼女が京都の一人旅をし終えたばかりだってことが分かった。ここは渡りに船で、体調の報告などはそっちのけで、京都観光について教えて貰った。さすがほかほかの体験談で有り難かったが、イマイチ具体性に欠けた。やはり行ってみなければ分からないかと少しばかり不安になっているところに、彼女からメールが来ていることが分かった。そしてその内容がまさしく僕が知りたかったことで、アドレスを貼り付けてくれているホームページを見てみると100%僕が知りたかったことが掲載されていた。もうこれで安心してあの子達を連れていってあげることが出来る。  このメールを見つけたのが1時半くらいだった。12時過ぎから30分くらい話をしているから、食事をする時間を計算に入れると、きっと仕事中にメールをくれたのだと思った。大都会の大きな会社に勤めているから、そして少しばかりベテランと言われる年齢層に近づいたから、堂々と?仕事中に私用のメールを送れるんだと感心していた。ところが今ふとメールの時間帯を見てみると、12時59分だった。彼女は休憩時間中にメールをくれたのだ。やはりとても真面目な女性だった。短時間のうちに必要な情報を選び出し、それを転送してくれるのだから、そう言ったことに得てているのだろう。 今まで沢山話をしているから、一度遠路はるばる訪ねてくれたこともあるから、彼女の性格や働きぶりなどはかなり分かるのだが、彼女を通して東京で働く全ての女性を理解しようとするなら彼女には負担だろう。林立するビルの中の一室から、電話をしてくれる姿は1000万分の1の東京でしかないのだ。