この町

 このモチベーションの差はいったい何なのだ。同じ業務であるはずなのに、とてつもない差を感じる。 少しの差を置いて不整脈の方が二人来た。一人は数年来の不整脈で困っている方で漢方薬を希望してきた。もう1人の方は処方せんを持って来た。タイプは違うが好感度がとても良い二人だったので、どちらの方にも懸念を解決して欲しいと思った。ただし、接し方は自ずと違う。漢方を希望してきた方には、問診から始め、僕の常だがくだらない会話に発展する。処方箋の方は、最低限の会話ですんでしまう。とくに若い方は見れば分かるので、パソコンでプリントアウトした説明書で十分だ。下手にくどくど説明すると逆にお仕着せがましくなり不快感を与えてしまうことがある。 来月から始まる市民病院分館の院外処方でのスタンスに戸惑っている。30年薬局に立っていると色々な知識が身に付く。教科書に出ているもの、自分で掴んだものそれぞれだが結構役に立つものが多い。それを処方せんを持ってくる人に話して良いものかどうか迷っている。ちょっとした養生で病態が良くなることは沢山経験している。ただお医者さんはその辺りを評価していない。だから余計なお節介になってしまう危険性があるのだ。おとなしく無難にしていればよいのだろうが、それもかなり難しい。 「医者と患者のどっちが大切なん?」と分業が全国的に始まった頃ある老人に尋ねられたことがある。今だ忘れられない言葉だが、この国の分業を鋭く見抜いた言葉だと思う。もし同じ事を今尋ねられたら「この町が大切」と答えるかもしれない。