条件

 こんなわざとらしさが一番嫌いだ。  市会議員の選挙がもうすぐあるらしい。時々立候補予定者がやってくる。と言っても、市町村合併で選挙区が広くなったから立候補するだろう人の中で知っている人は半分にも満たない。  今日もある候補者がやってきた。3人くらい引きつれていたが、その中のおばあさんは見覚えがある。なかなかのやり手で何かの役員をまだやっているのだろう、その種の記憶がある。もっとも僕の薬局を利用する人ではないから、その人が同行してくる理由は僕には分からなかった。寧ろマイナスの印象しか僕にはない。  まあそれはいいとして、頂けないのが立候補者の次の言葉だ。短く立候補の挨拶をした後に「最近、眠れないんです。何かいいものがありませんか?」と来た。僕はこのタイミングでその種の話をしたり、実行したりする人間を信じない。あからさまなお金による買収ではないが、間接的な疑似買収だ。このタイミングで、如何にもわざとらしくて恥ずかしくないのかと思うのだが、そんなごく普通のプライドがある人間はそもそも立候補などしないのだろう。僕なら、もし本当に体調不良があったら、意地でもこのタイミングは外す。  僕が投票するだろう人は、そんなに条件はない。ただ二つ。選挙の話を全くしないでしばしば薬局を利用してくれる人。東北のがれきで儲けようとしない人。今日の候補者は一番目の条件を満たしていない。