星座

 第九の前座だったのだが、僕は初めてミュージカルというものを実際に観た。テレビでやっていてもすぐにチャンネルを変えるのが落ちだったが、舞台の上で繰り広げられる歌や踊りに興味をそそられた。それこそ歌と踊りで、何の解説もなしに、表現を完成させるのだから、大した芸術なんだと少しだけ理解できた。  それにしても、人生で触れられるものなんて本当に少ないものだとつくづく思った。何十年かかって初めてミュージカルというものに触れられたことを思うと、人生で一体いくつのものに触れることが出来るのだろうと、余りにも自身の行動力のなさ、好奇心のなさに愕然とした。一つのものに専念することで多くのものを見渡せるほど高みに登ったのならいざ知らず、小高い丘から周りを見回しても見えるものはほとんど自分より高い山ばかりだ。あまりの標高差に多くのものを諦めてしまう。結局は何も知らない、偏狭な人生を歩むことになる。活字や映像で知っているつもりの平べったい対象から、なんら感動を導き出せないまま、知っているつもりの無知のまま終えるような気がした。 今外に出てみると東の空にオリオン座がメチャクチャ綺麗に見えた。片手で余るほどしか星座を知らないが、これも又のっぺらぼうの代表だ。