垣根

 祭りの日に偶然僕はだんじりを出す3つの部落を車で走ったのだが、その間2kmの間に、カメラを抱えた沢山の人を見た。一人で歩いている人もいれば、数人で集団を作っている人もあったが、圧巻はバスガイドさんに旗で誘導されていた10人くらいの集団だった。僕は生涯カメラをもったことがないので詳しくはないが、一様に持っているカメラのレンズがとても長かった。  そのほとんどがかなりの年配に見えた。だんじりや唐子踊りが目当てなのだろうが、テーマ自体が年配むきだからさもありなんと思ったのだが、何しろいでたちが尋常ではない。立ち居振る舞いもいっぱしのカメラマンだ。最早立派なカメラを持っているのは当たり前で、腕を競う段階に入っているのか。  僕の薬局にも自分で撮った写真を額に入れて持ってきてくれる方がいる。個展を開いたりして知っている人は知っているという感じで、いつの間にか町のカメラマンだ。ついこの前まで普通のおじさんだった人がいつの間にか芸術家になっている。  この様に恐らく現代は技術や作品を発表する環境が整っていて、誰もがいっぱしの芸術家やスポーツマン、歌手、俳優、タレント、小説家になれる時代なのだ。どの分野も垣根は限りなく低くなって、素人がプロに限りなく近づいている。余程のプロ中のプロでないと最早尊敬や羨望や驚愕は得られない。下手をすればプロの中の素人より、素人の中のプロの方がはるかにレベルが高い。  ただそうは言っても洪水のように押し寄せる素人(の作品)ではなかなか感動は得られない。プロ中のプロ(の作品)に巡り会う機会は以前より減ってきているような気がするが、それを感知する能力は逆に高くなっているような気がする。