純情

 おまえはこんな小さな頭で数学が出来るのか。長方形の対角線の丁度交点辺りに一晩中陣取って寝るから、僕は寝返りを打って押しつぶさないように、寝ているのか寝ていないのか分からないくらい浅い眠りで朝を迎える。結局僕は一晩中頭の部分だけ布団に残して胴体から下はずっと畳の硬い感触に耐えている。暑い日が続いているから畳のひんやり感は若干の救いだが、骨格系には結構応える。健康に必要不可欠の寝返りはと言えば、敷き布団を枕に長方形の一辺を行ったり来たりしている。  おまえは何て汚いのだろう。テレビの画面からはみ出しそうな大きな顔をして、何も国民のことなど考えてもいない。電気の会社を興した企業家の主催する塾で政治を学んだそうだが、所詮企業家譲りの価値観だ。金が全てだ。何を学んだのかおよその見当がつくから何も期待していないが、同じ小物ばかりを集めた集団で何が出来よう。出来るとしたら、企業家や役人を敵に回さない施策ばかりだ。ワタシの責任などと蚊の羽音程度の軽さで何おかいわんやだ。そう言えば自分の選挙がらみで色々汚いことが暴かれ始めている。偉い肩書きを持ったら捕まらないのか。痛くも痒くもない存在にはマスコミも寛容なのか。  まあ信頼するに足るものが一気に喪失したこの国で、犬一匹のために畳の上をゴロゴロ回転する純情が一つくらい落ちていてもいいだろう。缶ビール一杯飲みたかったばかりにちょっとだけ人様のお金を拝借して塀の向こうにいる僕の友人ですら、あいつらよりはずっと心は綺麗なように思える。