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 プライマリケアうつ病を疑うサインとして全身倦怠、検査で症状を説明できる原因がない、複数の部位にまたがる多彩な症状、複数の医療機関を受診している、慢性的に持続する症状などがある。また「抑うつ気分」のみだと、うつ病を感度良く拾い上げることはできるが、特異度が低いので偽陽性が多くなるそうだ。これに「興味・喜びの喪失」を加えると、感度・特異度ともに高く、うつ病を拾い上げることが可能になるらしい。抑うつ気分は、例えば「悲しみや気分の落ち込みを感じますか」と質問する。興味・喜びの喪失に関しては、「今まで楽しめていた趣味やテレビ番組などを今も楽しめていますか」と質問するといいらしい。  とまあ、ある専門医の言っていることを抜粋してみたら、なんとも僕のことを言われているような気がした。疑うサインの「複数の医療機関を受診している」以外は全部当てはまる。ただその複数の医療機関を、自分で複数の疾患に関して漢方薬を作って飲んでいると置き換えればパーフェクトだ。サインどころか片足は完全につっこんでいる。  別に感度よく拾い上げてもらおうとは思わないが、哀しみに打ちひしがれ気分は落ち込みっぱなしだし、今まで楽しんだ趣味もないし、低俗すぎてテレビなど楽しめる筈がないから、もう僕はほとんどどっぷりと浸かっている。正真正銘だし、資格充分だし、ほとんど教則本だし。  ただ僕は製薬メーカーの言うなりにはならない。企業というものは本来人間の集合体でしかないはずなのに、それが何故か人間の血が通わなくなり単なる数字を追う無機物に変身する様を見せつけられているから、信頼なんか全くしない。何十万人の住むべき土地を奪い、何百万人の健康を奪い、何千万人の不安を生み出していて今なお金の亡者で通す冷酷さを信用出来ない。電気だろうが薬だろうが、およそ良心などと言うものに支配されている企業を知らない。  今や薬を創るより患者を創る方が簡単だと気がついた彼らの高い給料のために僕はウツにはならない。こんなことばかり考えているから毎日ウツウツと暮らしてはいるが、病気ではない。ほとんど病気のような企業が作っている薬は、飲めば病気になりそうだから飲まない。色々言いたいことはあるがこの辺りでぐっと飲み込んでおこう。