職業

 何となく違和感をもちながらテレビを見ていた。 ある豚の酪農家が、小屋の中で育てるのではなく、原っぱで出来るだけ自然に近い形で飼育し、愛情を込めて育てていると言う番組だった。ブタさんと呼び尊厳を保っているように見えた。そうして育てたブタの肉質は他と全く違っていて、高値で売れるのだそうだ。出荷まで半年長く世話をやくのだから当然と言わんばかりだった。原っぱでよく動くから筋肉がしまっていて美味しいらしい。 僕には最初、一連の映像の主題が分からなかった。狭い空間に閉じこめてストレスをかけ続けることに対しての後ろめたさか、やり手の経営者か、どちらが訴えたいのか分からなかった。でも当然と言えば当然だが結局は経済的な成功者の紹介番組だった。  食卓で美味しく肉を頂くだけの消費者からはほとんど見ることが出来ない風景だ。昔は牛窓にも養豚業者がいたからあのブタたちの様子や臭いは鮮明に復元できるが、業者の想いまでは分からない。出荷まではまるで家族のようにいたわり、出荷行為は全く割り切れる、それがプロの姿なのだろうか。  世の中は、無数の分業によって成り立っている。専門分野以外に多くの人は疎く、他業種を少ない知識で羨んだり軽蔑したりしているが、どの職種にも深い知識や想いが包括されている。ひ弱なセンチメンタルなどを介入させない強靱な職業も多い。  知らないことで許されることも多いが、知ることにより許すことも出来る。