ウシガマヤゴム

 岡山県南もインフルエンザが流行りだしたみたいで、ある女性が数日間、お孫さんのお世話をしたらしい。世話と言ってもそのお孫さんは、クラス閉鎖になったから外出を禁じられて家から出られずにストレスを溜めていただけらしい。何をさせようか毎日が大変だったそうだ。「子供も可哀相に、あんな状態を昔からウシガマヤゴムって言うんでしょうね」と言った。その女性は岡山市の方だが、牛窓に近い岡山市だから、そんなに牛窓と言葉は違わない。だが「ウシガマヤゴム?」とそのまま聞き返さないといけないくらい分からなかった。どういう意味か想像も出来なかったのだ。「昔から言うでしょう、ウシガマヤゴムって。マヤは馬屋のことで、今で言うストレスがたまってイライラするってことでしょうなあ」「そうか、マヤ、ウマヤ、馬屋、馬小屋のことですね、その中でイライラ動き回るってことですか?」何となく分かったがどうもしっくり行かない。「でも、何で馬小屋で牛なんでしょうね」と素朴な疑問を投げかけると、「そう言われるとそうですな、何ででしょうね、まあ昔からそう言われているからそれでいいんじゃろうけど」と何らこだわりなく簡単に答えを出してしまった。  僕はその女性が使った言葉が果たして共通語なのかどうか気になったので、広辞苑で調べてみた。すると残念ながら載っていなかった。だとすると方言なのだろう。それもこの年齢になって初めて聞く言葉だから、かなり狭い地域での表現なのだろう。  こんな話をしている間に、娘夫婦が彼女のために、脳梗塞予防、インフルエンザ予防、膝関節痛の漢方薬を作ってくれた。たわいもない会話を交わすだけで健康になって貰える。これも1年ぶりに散髪して僕に品が出たからだろうか。