海外

 「この間、海外旅行でいとことハワイに行ってきました!! 人生初のハワイは、異世界でとても楽しい旅行になりました! バスや船の移動が多かったのですが、トイレのことなんか一度も気にしませんでした(笑) 何もかもヤマト先生のおかげです!」 実はこの手の報告は意外と多いのだ。この方の場合旅行だが、留学した人も数人いる。どちらのパターンでも、おおむね楽しんで帰ってきてくれている。と言うより、旅行中や留学中にはほとんどの人が治った状態になる。余程この国は住みにくいのだと思う。この国を離れさえすれば、あれほど日常のほとんどを占めていた過敏性腸症候群の症状が出なくなるのだから。国を一歩でれば、息が詰まるような日常から脱出できるのだろう。何が日常をこんなに息苦しくしているのか分からないが、横並びの価値観や秩序がそうさせるのだろうか。  治るのならどんどん出ていけばいい。自分の症状が異常なのではなく、この国のありようのほうが異常なのに気が付くかもしれない。発想の逆転が出来るなら、1年や2年遅れたって向こうで暮らしてみればいい。息をひそめて行動を縛り、やりたいことのかけらも挑戦できないでは青春ではない。正義とか平等とか自由とか、かけ声だけ与えられて何ら恩恵を受けられないような国にこだわる必要はない。嫉妬やねたみで足を引っ張られる必要もない。  挑戦しながら治す。出来ないことを一つずつ潰していく。これが僕の治療のスタンスだ。病人になってもいけないし、病人にされてもいけない。どうせみんな欠点だらけの人間なのだから、一生隠し通すなんて労力はしないがいい。力んでいるのは自分だけなのだから。