保護

 田舎には何処にでもあり、田舎にしかないものに防災無線というものがある。田舎という定義が難しいが、都市型でない自然に常に対峙している場所と言った方がいいかもしれない。その防災無線で今日、隣町の老人が朝から行方不明になっていると放送があった。年格好や服装などを説明して、見かけたら連絡して下さいとのことだった。  そこまでは何も感じなかったが、夕方になって発見されたという放送の時「保護されました」と若い女性の声でアナウンスされた後、何となく違和感が残った。保護されたという言葉に違和感を感じたのだ。逃げたペット、例えば亀とか蛇とかトカゲなどが見つかったときに使う言葉のような気がしたのだ。決して間違いではないのだろうが、せめてお年寄りに敬意を表し「おられました」くらいにすればいいのにと思った。一歩譲って子供ならまだいいのかもしれないが、仮に痴呆症の方だって年配者に違いない。何となく上から目線のような語感に不快感が残ってしまう。  それが役所言葉なのかと割り切ればいいのだろうが、そう言った上から目線がとんでもない隠蔽体質を併せ持つ。知らしめないことが何か徳の裏返しのように押しつけがましいこともある。知らされないことで見えないものを見ないようにする時代では最早ないと思うのだが、それでも見ようとしない人が圧倒的だ。もたらされるものを信頼し頼っていては、とんでもない目に遭わされることをいずれ多くの人が悟るときが来る。信頼に足る人や物はいつも質素で控えめなのだ。感じる力を磨かないと到底見つけることは出来ない。