不安

過敏性腸症候群が子供に遺伝するのではないかという懸念を時々相談されるが、過敏性腸症候群自体が遺伝することはない。自分が長い間苦しんだから、同じ経験をさせたくないと言う親心だろうが、結局遺伝の不安を口に出したお母さん方のお子さんは誰も発症していない。もっとも顔が似るように、気性も似る可能性が大きいから、その繊細さを学問や芸術などに転嫁させるようにおおらかに子育てすればいいのだ。過敏性腸症候群は繊細さが自分の身体に向かったときにのみ起こる症状だから、それを生産的な方面に向かわせる工夫をしてあげればとても能力を発揮すると思う。能力を生かす場所が違うってことだ。 僕も青春前期、異常なナルシシズムで苦しんだ。この道具が全く不揃いな顔で、福山雅治に似ていると勘違いしたばっかりに、回りの女生徒の視線が全部僕に集まっていると勘違いし、一つ一つの動作を完璧に演じなければ許せなかった。教室が僕にとってはまるで舞台だったのだ。あらゆる歓声は僕のものでなければならなかったのだ。失敗を許されない緊張の中で自分自身を追いつめてしまった。今ならなんて愚かだったのだと笑って話すことが出来るが当時は、その哀れな結果を一人で抱えてそれこそ心の中からその恐怖が消えたことはなかった。ただ、当然僕の遺伝子のほとんどは二人の子供達に受け継がれたと思うが、二人が僕と同じ病?で苦しんだことはなかったと思う。当然繊細さは似ていると思うが、顔の崩れきったバランスが僕よりは少し修正されたおかげで、僕ほどの苦しみではなかったようだ。