胃散

 単純といえば単純だし、たわいもないと言えばたわいもないし、気の毒と言えば気の毒だし、羨ましいと言えば羨ましいし。でもなんて言われようと今の僕にはそれしかないのだ。唯一の楽しみで、日曜日を指折り待っている。 まず夜の9時から「仁」を見て、11時からは「イ・サン」を見る。その間に風呂に入り月曜日が寝不足にならないように、イ・サンを見終わったらすぐ寝れるようにしている。これが最近の日曜日の夜のパターンだ。  物語の功罪が疑似体験にあるとしたら、僕はその時間「しぇんせい」になったり「東宮」になったりして「さき様」や「ソンヨン」に慕われていることになるが、いくら疑似体験でもせいぜい慕われるのは「モコ」くらいだから、空想の世界にも浸れない。それよりも羨ましいなぁなんて物欲しそうな観客に甘んじている。どちらもとても人気がある番組らしくて、僕の患者さんとの会話でも話題に出てくる。同じような疑似体験で喜んだり心配したりしている人が多いのだと思う。東北の人達には悪いと思うが、せめてこのくらいで喜んでいるのだから許してほしい。 韓国映画は敵を設定するのが上手くて、どうしても主人公を応援するのに力が入ってしまう。実際の社会ではそこまで悪人はいないだろうと思うが、ついドラマって事も忘れてしまいそうだ。いつか心に敵がいる人は漢方薬が効きにくいと書いた事があるが、ドラマの中にまで敵を作らせるのだから、監督としてはしてやったりだろう。僕みたいな単純な視聴者にどれくらい助けられているか。  「イ・サン」を見ないようにみんなにお願いしておかないと、ただでさえ効かない僕の漢方薬がより効かなくなる。所詮僕が作る胃散くらいではイ・サンには勝てないって事か。