鳥が見たのはどんな風景だったのだろう。一羽の大きな鳥がゆっくりと滑空していた。  昨日までの沢山の巨大な巣箱から出入りする大きな動物や小さな動物は何処に行ったんだろうと思っているのか。不快な大きな音を立てて煙を吐いて動き回る大きなものは何処に行ったんだろうと思っているのか。海に浮かぶ大きなものはどうして山の方に移動して動かずに横たわっているのだろうと思っているのか。暗闇の中に昼間のように明るく輝いていたものはどうして輝かなくなったのだろうと思っているか。昨日まで下界にあったもののすべてが何処に行ったのだろと思っているのか。  鳥の先祖の先祖のずっと昔のご先祖様が飛び回っていた頃の、太古の昔に返ったと思っているのだろうか。それとも毛皮を身体に巻いた大きな動物が、火をおこして暖をとっている頃に戻ったと思っているのだろうか。それとも頭に鳥のような鶏冠をつけた大きな動物が長いものをこしにぶら下げて歩いている江戸という時代に戻ったと思っているのだろうか。それとも、自然があの土地を大きな我が物顔の動物から奪い返したと思っているのだろうか。