選択

 どれだけの決断を迫られたのだろうと想像してみるが、所詮想像の域を出ない。あの若さで膝から下を切断する決心はどれだけ重くて辛かっただろう。ほとんどの人が生涯経験しないレベルのものだ。他者にとっては想像を絶するとしか表現しようがない。 1秒あれば運命は変わる。一瞬で不幸はやってくる。一生かけてもやってこない幸運とはまるで対照的だ。志しの高さも何の保証にもならない。寧ろそれだからこそ遭遇する不運もある。  無精で志低い僕は、こたつに足をつっこみラーメンを食べながら選ばれた不幸を見つめている。無限の時間と無限の場所と無限の動機のどんな数式が、あの時間とあの場所とあの志し高い人達を選んだのだろうと、無い頭で思案する。被災した人達が数字から個人に変わってきた頃、当事者でない安堵と何も出来ない歯がゆさに、居心地の悪さを感じる。 哀しみをいくつ見せられても、何もなかったかのように朝には日が昇り鳥たちがさえずる。春を呼ぶ風が吹き虫たちが目を覚ます。選択から漏れた安堵が居心地の悪さを伴ってこの国を覆う。