不労所得

 全く僕の無知から始まったホームページなのだが、一つのホームページが今月いっぱいで契約が終わり、抹消される。内容はもう一つの古くからあるホームページに、ある人の好意で移して頂いたから保存される。たいした内容ではないからどうでもいいようなものだが、毎日僕がどの様な方を世話して、どの様な方が改善できたかが分かるので幾ばくかの参考にはなると思って保存して頂いた。薬局には所詮薬局の守備範囲があり、それを逸脱したものは僕はほとんど野師の世界だと思っている。医者でも苦労しているようなものがおいそれと高い確率で改善するわけがない。偶然の産物などは公言に値しない。日常のごくありふれたお世話を載せているから参考にして欲しいだけだ。奇跡を追求するのも邪道だが、薬局がもっともお世話できるようなものを、勉強不足で断ったり、何か効きもしないようなものを煙に巻いて売りつけるのも邪道だ。本分をわきまえて地道にお世話する、これしかない。 冒頭の無知とは、プロにホームページを作ってもらえれば、やりがいがある対象者がどんどん相談に来るなんて思っていたのだ。ホームページを作ってもらってそんなことがあり得ないのだとすぐに悟ったが、その時はもう遅しで、5年間の契約をさせられていて、解約は出来なかった。しょうがないから上記の症例集を淡々と書き続けたがそれが果たしてどれだけの人の目について、どれだけの役に立ったかは定かではない。まあ、そうした後悔も5年も辛抱したのだからずいぶんと薄れて、今では後味の悪さだけ残っているのだが、ここに来て面白いことを経験している。  電話やメールでしばしば勧誘があるのだが、SEO対策?(単語が合っているのか合っていないのか自信はない)と言って、検索の上位に載せる職業があるらしいのだ。その勧誘がしばしば入る。あたかも僕のホームページの契約が何時終わるか知っているようだった。いや中には不思議だがハッキリ知っている業者もあった。そして一様にそれらの業者が言うことは、我が社のSEO対策をすると上位に入るというものだ。これを言うなら5年前に言ってくれれば良かったと思うし、それが出来るのならどうして5年の間なにもしてくれなかったのかと思う。契約を解除すると通告した瞬間から一生懸命になる。もう騙されないぞとこちらはいたって冷静だ。そもそも、上位に入りますと言って、何軒の薬局を勧誘しているのだろう。もし同じうたい文句で100軒の薬局がその業者と契約したらどうするのだろう。みんな上位なんて不可能なはずなのだが。こうして考えれば如何に矛盾したキャッチコピーかよく分かる。  そもそも、いい話がありますと色々な所から色々な内容で連絡があるが、本当にいい話などみんな内緒にして、自分だけがそのいい話を独占するのが人の常だ。それなのにわざわざ人を、それも不特定多数を勧誘するのだから、余程悪い話なのだろう。いい話は悪い話、簡単な道理で餌食になるのは防げる。ひたすら働いただけの報酬を得る。これ以外に報酬はない。  雑誌のインタビューに答えて2万円。我が人生唯一の不労所得だ。