子供手当

 「電話終わった後、なんだかすごく変わったんだなと言う実感が出てきました。とても自然な流れで、薬を変えても大丈夫と言ったけど、先生の薬にしがみついてるような前の自分では考えられないことでした。毎日考えることはお腹の心配ばっかりだったし、今思えば異常な毎日です。今はまだまったく考えないと言うわけでは無いけど、前に比べたらホントに少ないです。それも先生に出会えたからです。誰にもわかってもらえないお腹の痛みとか不快感を少しずつよくしていってくれたから、今の状態までこれたと思います。本当にありがとうございます。良くなったかもと人に言うと、また悪くなったりするかもしれないので、その時はよろしくお願いします(笑)生理のほうもこの調子でよくしていきたいです(^.^)」  お腹の薬はもういらないと、本来なら考えられないような言葉がふと口から漏れていた。その事に気がついて彼女は電話の後すぐこのメールをくれたのだ。体調が口から出す言葉さえ躊躇わせていたのだ。きっと長い年月、若い女性が何気なく口にする多くの言葉を飲み込んでいたに違いない。言葉ですらそうなのだから、行動においては尚更だ。多くのためらいを悔しさと共に現場に残してきたに違いない。 彼女は僕の薬局に初めて飛行機でやって来た人だ。数年前、彼女のおかげで岡山空港を訪ねる機会を持てた。乗客が改札口を全員出たはずなのに彼女だけは見えなかった。ずいぶんと遅れて1人だけ出てきた。トイレに行っていたそうだ。そんなおちで始まった彼女の初めての一人旅だったが、2日間一緒に行動してとても楽しかった記憶がある。僕の大好きな備中温浦太鼓を僕の家族と一緒に聴いたり、雪の岡山城や後楽園を散歩したことを鮮明に覚えている。  最近結婚して名前が変わったが、少し甘え気味のゆっくりとしたしゃべりは変わらない。幸せぶりが、と言うより安定した生活ぶりが言外に聞こえてくるから、自称第2父としては安心している。もっとも自称第2父の役割はもう何人になったか分からないくらいだが、僕が電話やメールでつい「幸せ?」と尋ねたときは、この自称が首を持ち上げているものと思って間違いない。  僕はわが子達には大学を卒業した時点でお役目ごめんと思っている。それ以後干渉するようなことをしては子供達が気の毒だ。この世は、親より大切なものはいっぱいある。優先順位のどのくらいに親が登場するのか知らないが、いまさら安土桃山時代には帰れない。それよりは自称をとことん拡げて、自称から巣立つ子供達を増やす方が余程意味がある。 ところで自称でも子供手当はもらえるのかな?