目的

 NHKの朝のニュースで取り上げたから、いよいよかなと思う。もうずっと懸念してきたことだが、このところ漢方薬の値段が上がり続けている。原因は中国での乱獲による品不足と、中国の労働者の賃金が上がったこと、日本以外でも先進国で漢方薬の需要が出来たことの3つだ。3つ目以外はもうずっと懸念していた。それがついにぎりぎりまで来たって事だろう。値段が上がるだけならまだ経済で対応できる人達もいるだろうが、品物がないとなると手の打ちようがない。慌てた日本の輸入業者は栽培に取り組むと言っているが、成分が同じレベルのものを土壌が違うところで果たして栽培できるものなのだろうか。見た目は同じでも成分が微妙に異なるのは、果物や野菜でしばしば経験することだ。  こんな現実を当然知っているはずなのに貪欲な製薬会社はキャッチコピーだけで漢方薬を売りさばこうとしている。どうでもいいような目的のために、さも効果があるように宣伝して、まるでインスタントラーメン宜しく売りまくる。ほんの少しの良心があれば、金と引き替えに天然資源を枯らしたりはしないだろうが、飽くなき欲望の集合体はうむも言わさず買いあさり、本当に困っている人、高くなれば買えない人達の権利を奪い取る。 有名になれば同じ処方でも売価がどんどん上がるらしくて、僕の薬局で作ったものより、2倍3倍の値段を付けている漢方薬局も珍しくない。余程お金持ちばかりを相手にしているのだろうが、薬局は単純な商売ではない。社会的に責任を果たさなければならない存在でもあるはずだ。大袈裟に言えば社会基盤の一角を占めると思うから、いたずらに相手を絞るのは正しいとは言えない。  こんな田舎の薬局にも多くの人が漢方薬を求めてきてくれる。僕の薬局にはどうでもいいような目的で漢方薬を取りに来る人なんて一人もいない。アレルギーで現代薬が飲めない人か、病院で治らなかった人達ばかりだ。そんな人から漢方薬を奪わないで欲しい。誰にどの様にお願いすればそれが叶うのか分からないが、どちらを見ても金と肩書きの亡者ばかりで、昨日今日の天気宜しく、重たくたれこめた雲から大粒の涙が降ってくる。