揚げ足

 国会中継やテレビのくだらない討論を見たり聞いたりしていて気分が優れないのは、次元の低い揚げ足の取り合いだからだ。肩書きがそれなりに出来ると、素直に相手の言い分を認めたりしたら敗者にでもなってしまうとでも言うのか。それともタレントに成り下がっているから、食いっぷちがなくなってしまうとでも言うのだろうか。これだけ日常的にくだらないものを見せられていると、運悪くそれが伝染して、僕ら庶民の間にも同じ人種が増えてきて、素直に相手の言うことを受け取れない人が散在するようになった。言葉尻を捉えてこれ見たことかとたたみかけたり、否定したりと俄然高揚する。最終的には自分を認めさせて納得して終わりたいのだろうが、そう運良く事は運ばない。 僕はその種の人達の不運を知っている。僕の職業的な小さな範囲のことでしかないかもしれないが、恐らく他の分野でも通用する普遍性も秘めていると思う。大げさな言い方をするが、僕はその種の人が嫌いでも苦手でもなく、純粋に薬剤師的に心配しているのだ。 一言で言うと、この種の人は病気が圧倒的に治りにくい。勿論若かったり、ちょっとした怪我なら差はないが、こと慢性病や慢性の痛みのトラブルになったら、圧倒的に治らない。同じ症状で、同じような薬を使っても治りは圧倒的に遅いか、やっては来ない。僕ら薬を出す側の揚げ足を取って何になるのだろうかと思うが、100の知識で1を喋る僕らに、1の知識で1を対等に喋ってくる。いつの頃から閉じた心か知らないが、聞く耳を持たないから良い声は届かない。よい耳を持ち不必要な敵対心を解除してやると、心も内臓も緊張が解けて血流が復活し病気が治る準備が出来る。こんな簡単な、それでいてもっとも大切なことが出来ない身体に治癒力はない。僕の実力をさておいて言わせてもらったが、大きな病院、近所のかかりつけのお医者さんでも恐らく同じ結果だと思う。