福袋

 電球とブルーレットを買いにホームセンターに入ったのだが、買う順番を逆にすれば良かった。電球売り場の方が簡単に見つかったから、電球の方から買った。その際に、今までのように数ヶ月で切れて使い物にならなくなる安いものにしようか、あるいは最近省エネをうたった電球にしようかしばらく迷った。以前買った発光ダイオードのものは極端に高いから、中間をとって、5倍長持ちとかなんとか書いている蛍光灯式の電球を買った。 そこからブルーレットの売り場はすぐに見つかった。ちょっと移動すれば買える場所だった。そちらに足を延ばしてまさに陳列しているのを見ようとした瞬間、「さあ、本日、小林製薬の商品、ブルーレットや○○をお買いあげの方にもれなく福袋を差し上げます」と、派手なはっぴを着たおじさんが突然大声を張り上げた。そこの場所をさっき通ってきたばかりだったのだが、その人はいなかった。つい今し方やってきて売り込みを始めたのだろうか。近くには僕一人しかいなかったので、余計大きな声で人を集めようとしたのだろう。一瞬その人と目があったが、僕は単なる通りすがりで通した。ブルーレットが切れていることに数日前から気がついていて、日曜日を待っていたからどうしても買いたかったが、残念ながら店内をゆっくり一周して帰ってきてもまだおじさんは頑張って呼び込みをしていた。ブルーレットって恐らく200円くらいだったと思うから、福袋と言っても子供だましのお年玉入れ位を想像しておじさんを盗み見すると、手に結構大きな福袋を持っていた。赤い袋に独特の自体で興味をそそる。意外と大きいんだ、でも中身はきっともらったら恥ずかしくなるようなものに違いないと思って再び知らぬ顔をして通り過ぎた。おじさんの大声に誰も反応しない。ついぞおじさんに近寄った人はいない。福袋欲しさと思われるような気がして買うに買えないので、もう一度だけ店内を一周したがやはりおじさんは、一人忠実に職務を遂行していた。きっと立派な社員なのだろう。不景気で、会社の売り上げがいまいちなのか、ブルーレットや○○を休みの日に店頭販売するのは不本意だろう。   おじさんの熱心さで、今日確実にブルーレット1個を売り損ねた。結局僕は買うことが出来ずに1週間待つことにした。意外と大きな福袋に一瞬心は動いたが、僕には師走に叫ぶそのおじさんの様子の方がブルーだった。