訓練

 マクロファージがガンの転移、浸潤に大きな役割を果たすという最近の知見をテレビで見て、僕は慌てて数社に問い合わせた。すると1社だけから回答が来た。回答は胸をなで下ろすものだったが、逆に僕がその製品を飲んでもらっている人全員が元気で暮らしている(た)ことも若干は裏付けられたかもしれないと安堵している。(もっとも、今ある僕にとっては大切な方が苦しみ始めたのだが) この数年、いやもっと前から、薬局でも色々な得体の知れないものが売られている。決まり文句は「マクロファージを活性化する」が共通だ。強大な敵に世界の叡智が立ち向かっているが、強力な薬を開発すればするほど、生体も痛んでしまう危険性も増してくる。そんな時に都合がいいのが、免疫を強くするってものだった。勿論理論は正しいと思うのだが、それをどの程度の裏付けで商品化しているのかが不安だった。商品開発している会社が、名前も分からない程度のもので、博士の肩書きの人が煙に巻くように難解な理論を振り回す。圧倒された側は、すごい武器を手にしたかのように薬局に帰って販売に精を出す。そんな繰り返しが多くの優秀な薬局で行われている。優秀であればあるほど、のめり込みやすい。カリスマはそうやって作り上げられる。  僕は運良く難しい理論には付いていけなかったから、日本でもトップクラスの製薬会社が、勿論ガンの薬でもリードしている会社だが、作った健康食品を会社の大きさを唯一の拠り所として扱うことにした。信頼できる会社の商品でないと、無理をして売りつける商売を強いられてしまうのだ。僕は今属している漢方の勉強会に加えてもらった20年前にもう商売は止めた。不安を煽り、また過度な期待をちらつかせお金を頂くのは僕の性格上精神的に負担が大きすぎた。そうした姿勢が今回も僕を救ってくれたのかもしれない。  驚いたのはやはり、立花隆がテレビで言う前に大きな会社はちゃんとそんなデーターを持っていたことだ。内容は省くが、マクロファージもM2マクロファージのことらしくて、僕が扱っている商品はM1でやはり効果があると言うことだった。もっと言えば、M2の割合をM1が減らすから積極的にとって下さいと言うことだった。それともう一つ、交感神経の異常興奮を鎮めるので、M2を減らすと言う相乗効果もあるっておまけ付きだった。  怪しげなものは扱わないと言う単純なことを守っていただけだったが、本当に胸をなで下ろした。  話は違うが、僕がコンドロイチンを沢山の人に飲んでいただいていた頃、牛窓ではコンドロイチンはとてもよく効く薬だった。20年くらい前だと思う。最近になって、健康食品という名の下に、それこそ名前も分からないような所で作られたものが宣伝力で飲まれるようになった。その結果、圧倒的多数の人が通販で飲むようになって、コンドロイチンは効かないものになってしまった。不純物が全くなく、必要量が含まれていれば効くに決まっているのだが、圧倒的多数の人が飲んでいるものは残念ながらそれとはほど遠い。今薬局でコンドロイチンを勧めるのが恥ずかしい様な雰囲気だ。お金儲けが、人の内臓まで利用して行われるのを止める機運はないみたいだが、良いものが駆逐されるのは残念だ。タミフルは効果があると判定した外国の検査機関が今日、軽症の人には効果が期待できないと発表を覆した。それはそうだろう、タミフルで1日発熱期間が短くなると言われていたが、結構何日か高熱を出している人にも遭遇する。今更と思うが、情報が会社や製品に有利に操作されているのは、あらゆる分野で明白だ。  何の力もない一人の人間が、怒ったり落胆したりしても何も変わらないが、いつでも怪しげなものを見極める目は訓練しておかないといけない。華々しいもの、口が上手いもの、そんな簡単な見極め方が結構当たっている。咲き誇っている草木の茎や根にも目をやる訓練が必要なのだ。