奇跡

 起こりえないから奇跡なのだろうが、奇跡を懸命に願い、ひたすら待っている人は多い。起こりえないことにしか希望を託せない過酷な現実に向き合って、それでもなお奇跡を信じなければならない残酷な状況。背負いきれないものを背中に負って生きる人達。それでも懸命に生きているから背負いきれているなどとはとても言えない。少しでも背中の荷物を分担してくれる人がいれば救われるが、不運はそれすらも奪う。 何処で折り合いをつけるのだろう。何処まで人は強くなれるのだろう。幸せはほんの少しでいい。その代わり不運もほんの少しで許してもらえないものだろうか。不運に理由なんか無い。理由がないから避けられず、避けられないから怯える。  謙遜なら許してもらえるのか、他者のために尽くしきれば許されるのか、何を差し出せば許してもらえるのか。誰かに、何かに裁かれているのか。誰かが、何かが許してくれないのか。ひれ伏して許しを請うても応えは聞こえないのか。 奇跡を待ち望みながら待ちきれずに命が果てる。苦痛からの解放が死なら何のために授かった命なのだろう。公平とか平等とか、そんな単純なことが僕は好きだ。