修理

 都会でも、田舎でも親切な人は多いのだろう。ただ、田舎の生活はのんびりしている分、自分の時間を他者のために使うことも容易だ。本来的な性格の上に少しはそれを許すそのような条件も加わらないと親切も難しい。  と言いながら僕はもっぱら親切を受ける側にばっかりいる。昨日もとても嬉しい好意に甘えた。余り詳しく書くと、同じ町内の人だからその人の立場が悪くなったら困るので漠然とした書き方をする。  家の中のある設備が1月前に壊れた。そこは1日中利用するところだから不便この上ないが、我が家には幸い他の場所にもあるので代用していた。すぐにでも直さなければならないほどではなかったのだ。ある人が漢方薬を取りに来た。その人の職業を知っていたから相談すると、すぐに2階に上がって行きなにやら点検し始めた。当然その人にとっては簡単なことで原因はすぐに見つけられた。道具を数点そろえるように言われたが、言われたもののほとんどは我が家にはなかった。彼はその辺にあるものでなんとか代用して挑戦していたが、結局は直すことは出来なかった。その努力にお礼を言っただけでその日は帰ったのだが、翌日会社の昼休みにやってきた。手には商売道具を持っていた。こうなればプロだから簡単だ。10分もしないうちに直ってしまった。ついでに見つけた不具合も直しておいたよといとも簡単に言った。彼が昼休みに来たのは理由がある。勿論彼の口から出たのだが、会社を通せばお金がいるだろうと言うことなのだ。わざわざ会社を通さなくても簡単な修理だからと気を回してくれたのだが、この辺りの気配りが何とも言えない。 それにしても手に職がある人は格好いい。僕も何回か修理に挑戦してみたのだが、なんともならなかった。彼らは道具箱一つで場所を選ばず、工夫を重ね器用に結果を出す。僕らのように、狭い調剤室の中でしか役に立たないような人種ではない。だから海外にも出かけていって役に立てるのだろう。  このところ、何気ない日常の親切に遭遇して感激の連続だ。観客に終始しなければならない不器用さは仕方ないから、いっそのこといい観客でおれるようその道を極めようか。・・・・・又楽な方へ流れる悪い癖が出る。