倹約

 夜の11時過ぎ電話が鳴った。息子さんが40度の熱を出してしんどがっているという。夕方仕事から帰ったら寒気がすると言って寝ていたのだが、今ふらふらしながら2階から降りてきたという。経過を尋ねたら、夕食後PL顆粒を飲ませたという。夜遅くに電話して申し訳ないと謝っていたが、そんなこと気にする必要はない。息子さんが早く楽になることだけが大切で遠慮なんかする意味がない。でもその言葉で家庭の雰囲気が良く分かる。やむにやまれぬ状況なのだ。その状況で僕に電話をしてくることを選択肢の最優先にしてくれたことが嬉しい。 10分もしないうちに薬を取りに来た。僕は家にまだPL顆粒が残っていることを考慮して、一番信頼している体力増強剤を1本と経口保水液を2本渡した。しめて1700円。これで体温が1度くらい下がって彼が楽になればしめたもの。明日は仕事を休んでと言って帰ってもらった。風邪で熱が出るのは、体温を上げてウイルスを殺しているからでむやみに下げる必要はない。少しだけ下げて楽になればいいのだ。結局彼は1日休んだだけで仕事に復帰した。  イギリスではおおむねインフルエンザはこのように治す。国が方針を定めていて、普通に仕事に行ったり学校にいったりしている大人や子供に対しては、病院にかからずに、まず静養、次に十分な水分補給、その後はアセトアミノフェンイブプロフェンを薬局で買って治すと言う自己治療だ。インフルエンザごときで病院にかかられたら莫大な税金の無駄と医師の貴重な仕事の邪魔というのだ。インフルエンザにかかったら早めに医療機関にかかりましょうと勧めている日本の厚生労働省とは対照的だ。税金の無駄を排するために医療経済を徹底的に追及した結果、医療効率を高めるための施策だそうだ。徹底した合理性に驚くが、医師不足や患者にも原因がある医療崩壊などを防ぐ手段にもなりうると思う。  不安を煽り視聴率や購読を促す番組や雑誌に惑わされ、臆病になった人達が不要な税金を使ってしまうが、40度でふらふらしながら薬局に勇気ある電話をしてきた家族が税金を少しだけ倹約してくれた。