方程式

 体調の相談に関しては、基本的には本人とやりとりする。ただ時にお母さんが窓口になることもある。そんな中で数人心をひかれる人達がいる。いや、今指を折って数えようとしたらいとも簡単に両の手では足らなくなったから、素敵なお母さんは多いのだ。もっとも素敵でないお母さんを捜す方が困難だろう。子にとって見れば母親は、愛情の固まりなのだから。  それぞれタイプも環境も異なるから一概には言えないのだが、子供に対する愛情の深さ、関わり方、自分の生き方などを、解けない方程式に懸命に当てはめて、結果的には立派な作品を作っている。どうしたらこんなに素敵なお子さんを得て、育てられるのだろうと数式に挑んでみても、お母さん方にはかなわない。父親の力も幾分はあるのだろうが、おおむね母親に負うところが多い。僕と縁が出来る作品達は優しすぎて貧弱なのか、愛情深くて孤独なのか。そんなことはない。優しすぎて他者を傷つけず、愛情深くて思いやれる。立派な個性だ。何ら劣っているのでもなく、何ら不都合でもない。最大の長所を最大の不都合にしているのは、貪欲でせっかちな世の中だ。それらに迎合する必要はない。きっと、これから必要とされる人達になりうるのだ。多くを作り、多くを壊し、多くを奪い合う時代はもう終わらなければ。静かに地球は冷めているのに。雲の割れ目から落ちてくる太陽の光でさえ、震えているではないか。