そう言えばそうだなと、自分の非科学的なところに感心する。NHKがハイスピードカメラで写した雨の映像を見て、雨って丸い水の玉なのだと気がついた。雨をまさか棒のようには思わなかったが、目に見えるのは、細長い棒のカーテンだ。絵に描くときも決まって白い棒で書く。意識の中には棒で存在している。確か1000分の5秒の世界を鮮明に眺められるのだから、ほとんど未知の分野に等しい。今まで親しんでいた概念が見事に覆される。科学が教えてくれた、見せてくれた、ありふれた世界の驚きの真実だ。  科学の発達って、こんなにすばらしい世界を見せてくれるのだと、開発した技術者に感謝したいくらいだ。これなら科学がもたらす恩恵を文句なしで受け入れられる。人を傷つけたり、破壊したりの科学とはまるで趣が違う。科学にも体温があるのだと気づかされる。人の心を優しく包む映像は、歴史的に有名な画家の絵画にも負けない。自然の営みが織りなす生命活動でさえ芸術のように見える。計算され尽くした自然の営みが計算出来ないくらいの感激を与えてくれる。  豪雨の時には空気抵抗に遭い、雨がまるでドーナツのように平らになって落ちてきていた。あの太い線で書くべき雨が、ドーナツだなんて。正式に放映される明日の夜9時に間に合うようになんとしても帰ってこなければ。例え僕の身体が空気抵抗に遭ってドーナツのようになろうと。