中学校の砂場で中型犬のクリを遊ばせていた。すると突然クリの姿が消えた。大きな声で呼ぶと鳴き声が砂の中からした。僕は手をスコップにして砂場を掘った。するとマッチ箱が出てきて、その中にクリが閉じこめられていた。マッチ箱を拾った穴を覗くと中にお菓子でも入っていたのだろうか紙箱が見えた。それを拾い上げ箱を開けると胎児が子宮の中と同じ格好で詰められていた。触るとまだ温かく、生きているのが分かった。鳴き声も聞こえたような気がした。僕は遺棄事件だと思って警察に連絡した。まもなく駆けつけた警官が、この母親がさっき自殺したと教えてくれた。  今日も授業に出なければならないのに、どうしても出かけられない。薬学部なのに数学がある。数学がそんなに不得手だという認識はないのに、何故か数学の授業に出られない。他の授業にも出る気がしない。これでは単位が取れないからやばいなと憂鬱になるが、一方で僕は卒業しているはずだと気付き始める。そこでいつものように目が覚め、卒業も国 家試験も一応クリアしていることを確かめて安堵する。  連続で見た夢か、途中熟睡を挟んでか分からない。でも、想像力たくましいというか、空しいというか、ろくな夢を見ないものだ。何を心配して、何を懸念して、こんな夢を見るのだろうかと思うが、この想像力が生産的なものに向けられないのが凡人の凡人たる所以だ。  いつの頃からか毎晩夢を見るようになった。熟睡感もあるし、朝もすぐ起きれるから問題はないが、ない頭を常に酷使していることだけは感じる。何の成果も現れないのに、何の報いもないのに、寝てまでも頭を使っている。せめて起きているときにもっと効率よく使えばいいのだが、感性に流されて理性は僕の頭上には停泊しない。悪夢を治療する漢方薬も理論上は知っているのだが、誰も試してくれない。若い頃から何も夢見ることが出来なかった分、今になって夢ばかり見ているのかもしれない。同じ夢という言葉を使いながら、心地が位置するところは天地の差だ。布団の中に未来はなくて、寝苦しさに身体をねじる汗の臭いだけがする。