月の心

 2週間くらい前ある女性が、岡山の大手のスーパーで野菜を買おうとして手に取り、産地を見たら中国産としてあったので止めたと話していた。数日前からまさに問題になったそのスーパーのその野菜だった。今日良かったと胸をなで下ろしていた。ニュースで報道されていたのを見たらしい。  この国もあの国も同じかもしれないが、時代の転換点にあるあの国では特にお金の崇拝が強すぎて、報道でインタビューに答える人達の言葉は聞くに堪えない。隠すことなくおおらかでいいのかもしれないが、奥ゆかしさが感じられない。誰もが皆太陽になりたがっている。ギラギラと欲望を煮えたぎらせ、経済の炎天下で貪欲に消費する。  今夜は満月に近いのかな。冷気に誘われて外に出、見上げれば月が見返す。入り江の土手沿いに歩けば、月明かりに僕の陰が横たわる。あんなに貧血気味の月でさえ陰を作ることが出来る。くっきりとした太陽の陰とは違って、水墨の陰が横たわる。これでいいのだ僕たちは。華やかな表舞台でなくてもいい、喝采を浴びなくてもいい、輝かなくてもいい、孤独とか、病気とか、貧乏とかを照らすかすかな光であればいい。どんな人でも備えている月の心があればいい。