台風が南にそれてくれ、風も吹かなかったし、雨も降らなかった。ただ、湿った空気の中に1日中閉じこめられたような気分だった。台風の直撃は免れたけれど、この湿度は、痛みに苦しんでいる人には残酷だ。電話で第一声を聞いただけで、痛みの程度が分かる。かなり強い鎮痛薬もほとんど効かないのだ。一過性のものなら耐えれるだろうが、慢性的に付き合わなければならない病気で、その痛みは辛すぎる。どうして、そんな不運が降りかかったのか。誰にも迷惑をかけずに懸命に生きているのに。  まれに見る幸運が誰の元に訪れても構わない。多くの人に訪れて、目の前を素通りしていっても構わない。だけど、まれに見る不幸が訪れているのを見るのは忍びない。自分の無力さが手伝って余計つらくなる。恐らく今夜も、何十万、何百万の人達が悲鳴を上げることも出来ず、泣くことも出来ずに遅い朝を待っているはずだ。  街に住むお偉い方、お願いです。お金をあの人達のために使って。理由無く不運を背負った人達のために。もう何も欲しくないから。欲しがることは失うことだと悟ったから。苦しみを共有できない分、叡智と愛情と経済であの人達を救って。偶然不運を免れている人達の義務だと思うのです。もう、鉄もコンクリートもいらない。安らかに眠れる夜を作って。