職人

 今じっと2時間耐えている。分包器が突然動かなくなったので、メーカーの方に来てもらって修理中だ。電話で指示を仰ぎながら挑戦してみたがやはりどうにもならず、プロの手を患わすことになった。もっとも、現場でみてもらったら、ある部品が完全に壊れていて交換しなければならないそうで、素人が頑張ってもどうにもならないレベルだった。見積もりをしますと言われたので、そんなものいらないから、すぐ直してと急かした。調剤が出来なければ、何の意味もないので修繕費がいくらだなんて言っておれない。まして7時までに2人分どうしても作らなければならないので、内心ハラハラしてみている。  プロはプロ。職業の分化が必然だとよく分かる。色々な器機の故障が相次いだり、色々な手続きが変わったり、およそその道のプロでないと対処できないことばかりで、機械の前でしゃがみ込み、工具を駆使している姿は神々しい。機械音痴の僕としては、特にこの分野の人達の助けは有り難く、思わず下げる頭が深くなる。偉い人には意識してちょこっとしか下げないことにしているが、技術者達には自ずと頭が深く下がる。  彼らの修練して得たものに比べれば、僕なんかが得た技はしれている。知識と呼ぶほどでないから敢えて技と呼んだが、30年経ってもなかなか確率よい仕事は出来ない。もともと納得がいく仕事というのが感じにくい職業なのかもしれない。達成感を得られにくい仕事かもしれない。「だいぶ良くなりました」とか「まずまずです」とか、およその反応でしか評価されないから。知識人でもない、技術者でもない。漢方の職人になりたかったが、自由気ままに出来る職業でもない。法律に縛られた職業だから、個性もなかなか発揮しにくい。薬の成り立ちを深く理解して、応用問題を解くことを得意とするしかないのかとも思う。  全ての人に笑顔で接し、沢山の人にファンになってもらう。そんなことが出来ない不器用なところだけが職人になった。