群れ

 なるほど、住みにくい世の中だ。繁栄を謳歌している人種と、それを支えているどころか、そのしわ寄せを受けている人達がいる。一握りの前者は、多数の後者の忍耐の上に成り立っていることに気が付かない。不幸なことに、後者もその社会構造にまで思いを巡らさないから、敵を身近に求めてしまう。残念ながら、誰でも良かった人達は、もっぱら後者のごく普通の人達なのだ。  道連れにするなら、いっそのこと社会悪を糾弾して欲しかった。構造を理解し、誰のせいで苦しむ人達が増えているのか考えて欲しかった。そしてその避けれない不平等を、声高に叫んで欲しかった。救いの手は、声を上げなければ差し伸べられない。声を上げれば誰かが気が付いてくれる。もし気が付いてくれないなら、この指とまれと右手を高く挙げればいい。その指を待っている同じ境遇の人間は一杯いる。豊かさのおこぼれを頂戴できない時代は、その指に沢山群がった。そうして何とかおこぼれを勝ち取ったし、自滅するのを防いだ。  夕方の公園で、路地裏でこの指とまれは少年少女の口から繰り返し出ていき、仲間を連れて帰ってきた。病気と同じ、1人で戦ったら負けてしまう。良い言葉を求めて、悲鳴を上げて、右手を突き上げて群れなければ。小さな群れでもいいから。所詮人間は群れをなす動物なのだから。