丸刈り

 ある少年が、脳腫瘍になり、抗ガン剤治療を受けている。治療のせいで髪の毛は抜ける。少年は、友人達にもう会いたくないと言う。級友達は、その少年のために何かをしてあげようと集まり、全員丸刈りになった。アメリカであった実際の話。アメリカの場合、お見舞いの時に何を上げるのかしらない。映画では花束を持っている姿が印象的だが、お金を包んだりする習慣があるのかないのか。  健康な人間が、痛みを理解するのは難しい。お金を包んで何の意味があるというのだろう。少しでも患者の苦しみを分かち合えたらそれに優るものはない。見舞いは時として、見舞う立場の帳面消しの場合がある。心から気の毒だと思えば、そっとしておく方がいい。突然訪問し、接待を余儀なくされたら治るものも治らない。見舞いは親類まででいい。  「いい人」は時として「都合のいい人」と同義語だ。自分に何か利益をもたらしてくれる人が「いい人」なのだ。「都合のいい人」は、色々な実利的な媒体を通じて吸引し合う。それを目的化しているのだから出会いは簡単だ。ところが「いい人」を捜して彷徨ってもなかなか遭遇しない。親友だって同じだ。「いい人」に出会わないことを嘆く必要はない。100人の「都合のいい人」を持っていても仕方ないのだから。まだ見ぬ「いい人」をゆっくり待てばいい。そうしている内に自分自身がゆっくりと「いい人」になれるから。