ベース

 クラリネットもトランペットも、サクソフォーンも主役だ。旋律を奏でる華だ。耳はいつもそれらの音を追いかけている。逆にベースは本来的には引き立て役だ。リズムをお腹に響かせる。ベースソロ以外はベースを耳で追いかけることはないが、それがない音楽は落ち着きがなくイライラさせる。いわば主旋律を奏でる楽器は交感神経に響いて、ベースは副交感神経に響くのではないかと思う。  若いセールスの方に、ベースが中心の音楽を探してと頼んでいるが今だ持ってきてくれない。そんなものないのかもしれない。主役が不在の映画を探しているようなものだ。しかし、主役ばっかりになりたがる風潮にうんざりしているから、時には引き立て役が引き立っているものを観たり聴いたりしてみたい。決して華々しくはないけれど、しっかりと大地に根を下ろし、ゆっくりと呼吸しているものたちに巡り会いたい。