流木

 2日連続で恋についての相談を受けた。この年になると相手にとっては無防備らしくて相談しやすいのだろう。結構、健康以外の相談もあるのだが、この分野の答えは相手が望む答えになるのかどうか疑わしい。健康面で期待した答えをもらえるから、この分野でもと期待してくれるのだろうが、基本的なスタンスが、恋愛感情はまず煩わしいと言うところから入っているので、今まさに恋が人生の全てと言う人とは温度の差がありすぎる。  失恋した人には幸運だったねと答える。結婚してから別れるのは数倍のエネルギーが必要だ。次を堂々と探す機会をくれたのだから有り難い。地球上に数十億と人間がいるのだから、別れた男より魅力的な人なんか、何百万人もいるだろう。選り取り見取の権利こそ価値があるのだ。  数年待ってくれと言われた人には、その間にいい人と巡り会えるように仕事を頑張れと言った。結果、いい人と巡り会うことがなければ、待った男と結婚すればいい。ただひたすらに待つ必要なんかない。権利は行使しなければ、権利ではない。受け身の必要なんかない。  人が動物でおれる時間なんか高々しれている。ある程度の歳になれば束縛からの解放こそ価値があることに気がつく。ひとつずつ捨てて捨てられて、無駄をなくして、流木のように生きるのも良い。目指すところを持って荒海を渡るのもいいが、結局は流木のように流され流される。いつかは誰もが砂浜に打ち上げられ、乾いた流木になる。無駄も不自由も削り取られた流木になる。