なにやら大切そうに袋から取り出した物がある。見ると、両手のひらからはみ出す位の大きさのサルのコシカケだった。山で見つけたといっていた。家にはこれの何倍かの物もあるという。以前サルのコシカケを見つけたから買ってくれと言ってきた人がある。僕はすぐそのことを思い出したが、今日の方はそんな感じではなかった。持病の糖尿病に効くかどうか尋ねに来たらしい。  お嬢さんに連れられてきたが、見かけない方だったのでどちらから来たか尋ねた。○○の田舎からですと教えてくれたが、訪ねてきてくれた牛窓も田舎だから、田舎から田舎に来たことになる。強いて言えば、岡山県の山間部から海辺にやってきたわけだ。サルのコシカケの効能(?)を説明し、珍しい物だから飾っておいたらいいのではと提案した。  糖尿は自分で解決方法を探すより、医師の言うことを守った方がよいなどと話すうちにいろいろなことを教えてくれた。整形、眼科、耳鼻咽喉科、内科に渡るトラブルを列挙した。ある年、一つの症状の発現をきっかけに、元気が自慢の人が病気の百貨店みたいになったらしい。一つの病気に一つの薬をあてがっているからたいへんな量の薬を飲んでいることになる。聞いているうちに漢方薬でお手伝いできる物がずいぶんあることに気がついた。ヘルペス後遺症では薬をもう一生飲まなければなんて言われているらしいが、ひょっとしたらそれも治すことが出来るかもしれない。現在服用している薬が分からない限り迂闊に漢方薬でも出せれないから、その気になったら来てねと話を濁したが、田舎から来たと言う人の良さそうな婦人の役に立てたらなとつくづく思った。縁があれば又正式に訪ねてきてくれるだろうが、あれだけの不調を抱えて頑張っている人の、ほんの一つの苦痛でもとってあげれたらと思わずにはおれなかった。僕は情が簡単に移るタイプなのだ。