流木

 いろいろな体調不良を漢方薬で治している人が、そういえば漢方薬を飲み出してから、死にたいと思わなくなったと教えてくれた。しんみりと、しかし突然言われたので、一瞬ぴんと来なかったのだが、それはとてつもなくありがたいことで、そんなところまで漢方薬を使うと影響を及ぼすことが出来るのかと嬉しかった。最初からそれがテーマで与えられているのなら、病院を紹介して、縁は生まれなかっただろうが、自律神経の失調を治せば良かったので縁が生まれたのだろう。  それにしても皆、悩みは持っているもので、身体も心も傷ついている。傷ついた羽根で懸命に空を飛んでいるのだ。上昇気流がいつも捕まえられるとは限らない。懸命に羽ばたかなければ落ちてしまう。島から島へ渡る鳥のように命をかけて羽ばたき続けているのだ。鳴き声もあげずに、けなげに飛び続けているのだ。鳥も人間も同じだ。目指す島が見えるなら、心の目で見えるなら、何とかがんばれるのだ。心の目でも島が見えなくなれば力つきてしまう。  漢方薬が、大海に漂う一本の流木だったのかもしれない。一時羽を休めることが出来たのかもしれない。思ってもいなかった効果に、励まされた。