落ち葉

 定置網にかかった魚のように、テニスコートを囲む網に、落ち葉が風に運ばれ引っかかっている。その下には吹き寄せられた落ち葉が高く積もっている。従来なら熊手で集めてたき火をするのだろうが、今はそれが条例で許されない。僕ら農業に従事しない人間にとってはさほど痛手はないが、農家の方は大変だと思う。枯れ草を焼いてその灰はまた畑に返せば循環するが、収集車に持っていかれたのでは何の役にも立たない。  夕闇迫る頃、田圃が広がる景色の中で、白い煙が低くたなびく光景が好きだ。草の燃える匂いでもしたらもうたまらない。母の里に幼い頃預けられていたころの想い出が蘇ってくる。牛もいたし、鶏もいたし、犬も猫もいた。メダカを追いかけ、蛙を釣った。生きとし生けるものの中で育った。命が一杯身近にあった。優しく見守ってくれた人達や、おおらかに受け入れてくれた風景、戦うことをしなかった時代に感謝。  効率に踏みにじられる風習を惜しむ。無くならなくてもいいものがどんどんなくなっていく。無くてもかまわないつまらないものがどんどん現れ駆逐する。残念。