直立不動

先日母のアッシー君で里に行ったとき、いとこの子のお嫁さんから、僕のブログを読んでいる同僚がいると聞かされた。その方は、偶然だけど僕の名字を屋号にしたような名前の方らしく、ある医療機関で働いている。偶然僕の息子もそこで働いているので、好奇心で読んでくれているのかもしれない。名字を聞いただけで、後はなにも分からない。年齢も、風貌も、物腰も分からない。分からないのは不便ではない。むしろ希望なのだ。秘めたる部分があるから人は好奇心を持続できるが、分かってしまえば、興味は絶叫マシーンのごとく落下してしまう。  僕のブログを読んでくれる人は、ほとんどが僕が薬を送っている人と思っていた。まあ、好奇心から薬業界の人たちも多く含まれるだろうとは思ったが、そのどちらにも属さない人が読んでくれているのは予想外だった。そのような方に何をどのように書いたら喜んでいただけるのかは分からない。そんなに器用ではないから、時流に乗った文章はかけれない。ただ、ひたすらに田舎の薬局の窓から見える風景を描くことで、僕がどのような人間で、どのような想いで薬を作っているか知ってくれればいいと思っていた。何の手がかりもなく僕の薬を飲むのは不安だろうから。  キーボードをたたけば人が降る。ザアザア音をたてて人が降る。直立不動で人が降る。コンクリートに人が降る。夜の隙間に人が降る。まだ見ぬ人に人が降る。