火傷

 煎じ薬を作っている時に丁度相談の方が来られて、慌ててしまい熱湯を小指の上にこぼしてしまった。機械でパック詰めにするもので、途中で止めると分量などが合わなくなるので、痛いのを我慢して最後までやった。何回も同様の失敗はしているので、余り深刻には考えなかったが、水泡になったその箇所は3時間余り痛くてやっと今治まった。その間アイスノンをあてつづけた。いつもならすぐに冷水で冷やすのだが、我慢した数分で治癒のしかたが全く異なる。ちょっとした養生をバカには出来ない。  至近距離で背後から撃たれ銃弾が貫通する時何を感じるのだろう。倒れてもカメラを持ち上げたのは何故だろう。誰かに撃たれたと分かったのか、自分に何が起こったのかわかるのか。撃った兵士は、政権が転覆した時には裁かれるのか。権力者を栄華を極めたと同じ深さの谷底に転落させることが出来るのか。チャップリンの殺人狂の中のせりふが忘れられない。市民が人一人殺せば殺人犯だが、戦争で沢山の人を殺せば英雄だ。誰を、何の為に殺さなければならないのだ。殺す方も殺される方も、たかだか庶民で失うものばかりで得るものなど何もないのに。殺人狂を作って、誰かが背後で笑っているのに。  ほんの小さな火傷でも数時間痛かった。背中から胸にかけて穴があき、血が噴出すのを見てジャーナリストは何を思っただろう。比べることの出来ない傷みと苦しみと恐怖を、正義と引き換えに引き受けたのか。悲しすぎる民族と悲しすぎる一人の死。