恩恵

 季節も月も、一瞬立ち止まって考えなければならないような朝だった。 ある本を買いに岡山では有名な本屋にいかなければならなかった。朝早く出すぎたので、10時の開店を少し待つことになった。市営の駐車場から数百メートル歩かなければならないが、焼けつく太陽の光ですぐにTシャツの汗が飽和した。信号機が青に変わるのを待ちながら、手のひらでオゾン層を貫通して届く紫外線を避けながら、季節を確かめた。視界に入るものの中に季節の変化は存在していなかった。「今日は9月だよな」一瞬自信を失いかける。  リュックを背負った現役引退組をよくみかける。昨日も神戸で、いや至るところでお目にかかった。さっそうと歩く姿が若者を圧倒している。若者3人で老人1人を支えなければならない時代に、支えられるほうが元気だ。携帯ごときに支配されている若者には荷が重すぎる。思考力さえ携帯では荷が重過ぎる。こんな時代に歴代の老人がした。与えるべき恩恵と、与えてはいけない恩恵がある。このところ後者ばっかりが目に付く。