考え過ぎ病

 久しぶりに魚も肉も卵も牛乳もパンも家族と同じように食べたと、喜びのメールが今日入ってきた。過敏性腸症候群の人でなければ、何でもないことだが、彼女にとってはおそらく数年ぶりに口に出来たのだから、喜びもひとしおだろう。それよりも家族の方の方が喜びは大きかったかもしれない。長い間何故わが子がその様な大切な食材を避けるのかおそらく理解できなかっただろうから。  僕は、彼女に何でも食べるように勧めた。彼女の食生活を聞いて、とてもストレスに強くなるとは考えられなかったから。上記のものを避けているのだから、心どころか、体が持っているのも不思議だった。若いからなんとかなったのだろうが、失うものは気がつかない間に失いつつあった。妻が牛窓で獲れた魚をこの辺りでは極普通の料理方法で出したら、こんなに美味しい料理は食べたことがないと言って、とても喜んでくれた。その反応を見て僕は気がついたのだ。彼女の偏った食事に関する考え方に。  多くの過敏性腸症候群のガス漏れの方と話をしていて、極端な食事制限をしている人がいることに気がついた。もともと、几帳面でがんばり屋さんが多いから、やりだしたら徹底する傾向がある。ところが、ただでさえ几帳面な人が寄り几帳面に徹すると、つねに緊張を強いられ、交感神経びんびんの性格、生活になってしまう。緊張型の人が寄り緊張することになるのだ。それではさすがに持たないだろう。ゆるまなければ改善しない。  最近の僕は、食事指導を余りしない様に心がけている。過敏性腸症候群を治す為に、いや一般の方でも健康を維持するために役立つことだが、そのことが精神を縛っては逆効果だと気がついたのだ。だから今は「法律を破らない範囲で好き放題して」と助言している。おいしいものを食べ、好きなことをして、他人を傷つけなければ、人生は楽しくて、過敏性腸症候群なんて忘れてしまう。「考え過ぎ病」「真面目過ぎ病」「頑張りすぎ病」全部僕がネーミングしたと思うのだが、余りにも多すぎて気の毒だ。だって、その反対の人達はうまくやって「幸せ過ぎ病」になっているのだから。いくらなんでも、それでは割に合わないだろう。さあ、体に悪いものを食べ、体に悪いことをしてごらん。病んだ心も体も治ってしまうかもしれないから。