薬学生

 薬学生が帰ってから、僕ら3人が思わず口をそろえていったのが「いい子だったね」だった。漢方薬の勉強に2日間だけ通ってきたのだが、上の言葉しか見つからないような好印象の女性だった。いままで何人かの薬学生を受け入れたが、最後に写真をとって別れたのは初めてだ。  それでは何が好印象をもたらしたのだろう。攻撃的ではなく、謙虚だった。控えめではない。やらなければならないことは出来る。清楚な感じはするが都会的なセンスも持ち合わせている。僕は、誰にも不要な好奇心は抱かないようにしているので、彼女の背景についての会話はしなかったが、きっと、愛情に包まれて育ったのだろうと思った。合併して同じ市内になったが、その町の幸せそうなひとつの家庭が目に浮かぶ。 よい父を持ち、よい母を持つのは幸せだ。それがかなわなければ、よい祖父を持ち、よい祖母を持つのは幸せだ。それがかなわなければ、よい兄弟を持つのは幸せだ。それがかなわなければ、よい叔母やおじを持つのは幸せだ。それがかなわなければ、よい隣人を持つのは幸せだ。  幸せとは、大切に思ってくれる人がいることだ。さて、きっとそんな人にいっぱい囲まれているだろう薬学生のよき隣人の一人に僕達家族が加われたかどうか。