ペットショップ

 嘗ては岡山県一の集客を誇っていた商店街を夕方歩いた。シャーターが降りた店もあり、営業はしているが人気のない商店も多かった。そんな中で特別客が多い店があったので覗いてみたら、ペットショップだった。中でも人だかりがしていたのは、子犬のコーナーで、たくさんの子犬が、一匹ずつガラスケースの中に入れられ、寝ていたり、タオルとじゃれたりしていた。さすがにペットショップには雑種と言うのはいないらしくて、それぞれに僕でも知っている犬種の名前が載っていた。はやり廃りがあるのか知れないが、日本犬より洋犬のほうが圧倒的に数が多かった。中でもミニチュアダックスが多かった。それらの犬の値段に驚いた。思わず丸の数を数えてしまった。僕の感覚より明かに丸が1つずつ多かった。これでは人間より高い。最初に思ったことはそのことだった。人間より高い。随分と高い。人間は、これより丸が1つ少ないと、いや、2つ少なくても、自殺したり、盗みをしたり、飢えもする。子犬より少ない金額を稼ぐことが出来ずに、人生に終止符をうつ。子犬一匹の価値もないのだ。子犬に、ガラスケースから悲しげな目をして見られると、ここから解放してあげたいと思うのだろう。若いカップルや、家族連れが、若い店員の説明に耳を傾けていた。そこには不幸の姿はない。見えないガラスケースに入れられて、朝から晩までこき使われて、あげくはなにも残らない、路上生活者のような貧困には誰も目を向けない。悲しげな目を見ようともしない。子犬一匹で人間を救えるのに、優しい心は人間には向かない。