今日、ある漢方の問屋さんのセールスが、1冊の本をくれた。漢方を標榜した立派な装丁の本だ。最初から3分の2くらいのところまでは漢方薬の治験例や対談が載っていた。後の3分の1は全国の漢方を使用しているお医者さんと、漢方の○○研究会に属していると言う薬局の名前が出ていた。勿論僕は出ていない。僕の薬局に来てくれた方はわかるだろうが、漢方薬局などと言う面構えではない。建物は勿論だし、僕自身もそうだ。僕の頭の中などもっとそうだ。鉄筋の真っ白い建物に、ジャズかレゲエか賛美歌が流れ、ジーパンをはいた胡散臭い男がやっているのだから、雑誌に名前を載せることすら躊躇うだろう。僕の実力もまだまだだと息消沈してページをめくっていると、どうも名前が挙がっている県内の病院も薬局もしっくり来ない。本を閉じて眺めていてその理由に気がついた。なんとその本を丸々買い取っているのがある漢方薬のメーカーで、要は、そこのメーカーと取引をしているところが、漢方をよく勉強している医者や薬局なのだ。 テレビ番組の捏造事件がどんどん暴かれているが、実はこの種の本も同じ穴のムジナだ。あたかも客観性を保っているようだが、実は単なるコマーシャルなのだ。善意の欠片も感じられない。