印籠

8時にシャッターを急いで降ろすと2階に駆けあがり「水戸黄門」を観る。今日から又あの超マンネリ番組が始まった。話しの筋も結末も、まるで演歌の節回しのように想像がついてしまうのだが、それでいて観たくなる。思えば僕の祖母が大ファンだったから、隔世遺伝なのかもしれない。  勧善懲悪の単純な筋書きなのだが、今の世にそれを期待することが出来ないから、作品の中に求めているのだろう。一人の権力者が権威を振りかざして難問を解決するのには抵抗あるが、虐げられた人々が救われるあたりは溜飲が下がる心地がする。  どこかの街で、戦争が好きで、下層階級を虫けらのように思い、身内ばかりを優遇し、ハンディーを持った人々を蔑視する老人が首長に三選された。自分の子や孫が戦場に送られることを想像できないお人よしが、自分の子や孫の命を奪う。ちょっと先のことすら想像できない市民が自分の子や孫の首を締めた。  諸国を漫遊する水戸黄門は必要ないが、朝早い海の上で身を切られ漁をする人達、二重におり曲がって鍬を打つ老百姓、機械より機械らしくなってベルトコンベアーで運ばれる製品と格闘する労働者たちに、世直しが出来る印篭を与えて欲しい。