欄干

こうしてうつむいたまま歩いていると 僕は何に見えるのだろう 仕事にあぶれて 自棄酒をあおる屋台を探しているように見えるのか さっき 釈放されたばかりの 無銭飲食の常習者に見えるのか 嫁さんに逃げられて スーパーの半額の惣菜を買いに行く中年男に見えるのか

こうして立ち止まり アスファルトに落ちる雨を見ていると 僕は何に見えるのだろう こぼした涙を消してくれる雨に 感謝しているように見えるのか 消したい記憶を流してくれる雨に 感謝しているように見えるのか 抑えきれない怒りを冷ましてくれる雨に 感謝しているように見えるのか

こうして欄干から身を乗り出して川の流れを眺めていると 僕は何に見えるのだろう やり直しがきかない人生を このあたりでお終いにしたがっているように見えるのか 流れの先の大海原に 叶いもしない想いを寄せる少年のように見えるのか 背中を押してくれる風を待っている 臆病な人間に見えるのか